4 『源氏物語』の時代設定はいつか

『源氏物語の謎』増淵勝一 著 - 国研ウェブ文庫

「いづれの御時にか、女御・更衣あまた侍ひ給ひける中に…」で始まる『源氏物語』の「いづれの御時」とは、作者紫式部の活躍していた一条天皇(在位986年~1011年)の時代をさかのぼること百年ほど前の醍醐天皇(在位897年~930年)のころと考えられています。

『源氏物語』には琴(きん)の琴(こと)(七絃)の叙述が非常に多く、源氏自身も琴の名手です。実はこの楽器は延喜(901年~23年)のころまでは弾かれていましたが(『河海抄』)、一条天皇のころにはすたれて、箏の琴(十三絃)の時代になっていました。
正月十四日には舞人が舞踏唱歌する男踏歌が行なわれたことが「末摘花」「初音」「竹河」等の巻に描かれています。この行事は円融天皇の天元六年(983年)正月に行なわれたのが最後でした(『花鳥余情』)。

なお、冒頭にいう「女御・更衣あまた侍」っていたのも醍醐天皇(皇后以下計二十三名)や村上天皇(中宮以下計十一名)の時代でした。

『源氏物語』の皇位継承は、桐壺帝-朱雀帝(桐壺一男)-冷泉帝(桐壺十男)-今上帝(朱雀一男)となりますが、それは実際の、醍醐-朱雀(醍醐十三男)-村上(醍醐十七男)-冷泉(村上男)天皇の系譜に重ね合わせることができます。したがって『源氏物語』の時代設定は、一条天皇の時代より、五十年から百年ぐらい前の醍醐・村上両朝(897年~967年)前後に置かれているようです。

『源氏物語の謎』増淵勝一 著 目次

  1. 『源氏物語』はいつ書かれたか
  2. 『源氏物語』はどんな物語か
  3. 『源氏物語』の巻名はだれがつけたものか
  4. 『源氏物語』の時代設定はいつか
  5. 光源氏に愛された女性の中で、一番しあわせだったのはだれか
  6. 『源氏物語』の伝本にはどんなものがあるか

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