8 『源氏物語』という書名ははじめから付けられていたものか?
『源氏物語の謎』増淵勝一 著 - 国研ウェブ文庫
『源氏物語』の書名は、『紫式部日記』寛弘五年(1008)十一月一日条に「『源氏』にかかるべき人見え給はぬに」とあり、また同六年正月条につづく書簡文に「『源氏の物語』人に読ませ給ひつつ」とあり、さらに同年六月条に、「『源氏の物語』御前にあるを」とあるので、『(光)源氏の物語』と最初は「物語」の前に「の」を入れて呼んでいたことになります。つまり源氏の姓を頂戴して臣籍に降下した皇子、光源氏を主人公とする物語の意で付けられたことがわかります。
『源氏物語』のことをいち早く伝えている『更級日記』冒頭部(寛仁四年〈1020〉以前)には、「その物語、かの物語、光源氏のあるやうなど」とあり、また作者の菅原孝標の女が上京した治安元年(1021)三月条には、「紫のゆかり」「この『源氏の物語』、一の巻よりして」「『源氏』の五十余巻、櫃(ひつ)に入りながら」等と見えています。いずれにしても『源氏物語』は『源氏の物語』、略して『源氏』とか『源語』とも呼ばれていたのです。つまり物語の主人公の名で呼ぶのが一般的で、紫の上がヒロインであることを強調すると、『紫(の)物語』となり、後世には『紫語』『紫文』『紫史』などとも呼ばれています。 これは『竹取物語』は『竹取の翁の物語』であり、『伊勢物語』が『在(五)中将』、『うつほ物語』の初巻を「俊蔭」、さらには『平中物語』など、主人公の名で呼ぶのが書名の基本であったこととも共通するところなのです。
『源氏物語の謎』増淵勝一 著 目次
- 『源氏物語』はいつ書かれたか
- 『源氏物語』はどんな物語か
- 『源氏物語』の巻名はだれがつけたものか
- 『源氏物語』の時代設定はいつか
- 光源氏に愛された女性の中で、一番しあわせだったのはだれか
- 『源氏物語』の伝本にはどんなものがあるか
- 『源氏物語』の三大滑稽人物とはだれか?
- 『源氏物語』という書名ははじめから付けられていたものか?
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